筆者:別府厚生
  1938年東京生まれ。少年時代と1974年以降、奄美大島在住。
  趣味は写真撮影、ヴィデオ撮影、釣り、囲碁等。


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【 秋名アラセツ】

 
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龍郷町秋名地区は奄美で現在でも稲作の行われているほとんど唯一の地域である。その稲作に関わる伝統行事「ショチョガマ」と「平瀬マンカイ」は国の重要無形民俗文化財に指定されている。その行事は毎年旧暦8月の初丙(ひのえ)の日に執り行われる。今年は9月19日がその日に当たった。

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早暁、田圃を見下ろす山腹に建てられた小屋の片屋根に大勢の男衆が登り、祈りと唄を捧げ、来年の豊作を祈願する。東側の山の峰に朝日が昇る頃、男たちはユラ・メラの掛け声とともに屋根を揺すり始め、やがて屋根は傾き倒壊する。屋根が(正面から見て)左側に倒れれば豊作とされるが、去年に続き今年も右側に倒れた。(ちなみに今シーズンはすでに豊作だったそうで、この辺りはあまり追求しないでおこう。)

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ショチョガマと対をなす行事「平瀬マンカイ」は夕方の引き潮にかかる頃、海岸左手の渚で行われる。白装束の5人のノロ役の女性たちが、神平瀬と呼ばれる岩に上り祈りを捧げる。少し離れたメラベ平瀬と呼ばれる岩には7人の男女が上り、チヂン(鼓)と唄と踊りをノロに向かって奉納する。ノロたちは海の彼方から豊饒の神を招くかのような仕草をし、やがて岩の上でひざまずいて両手を合わせて海に向かって祈る。
 儀礼が終わると、その場で村人も加わって八月踊りと宴が繰りひろげ
られる。